男というのは往々にして父親よりも母親を好むものだと思う。
それが時に女性からすると「マザコン」だと映るのかもしれないが。
以前にも書いたとおり、昔はうちの父はしょっちゅうささいなことで母を怒鳴りつけていた。
暴力をふるうことはほとんどなかったが、
僕にとっては(おそらく兄貴にとっても)母を泣かしている父は敵だった。
俗に言う「エディプス・コンプレックス」というやつだろうか。
さらには母が陰で「万年平社員のくせに」とか言ってたのを聞いていたこともあって、
父はなりたくない大人の象徴とも言える存在だった。
昨日は父がうちに来ていた。
父は僕が一人暮らしを始めてから、
うちに来たり電話をするたびに帰る前や電話を切る前に
「何かあったら言いーよ」
と言ってくれていた。
昨日もそうだった。
別れ際にそう言ってくれて、
耐えられなかった。
一人では週5のペースで泣いている僕だが、
人前で泣くのは久々だった…
と思ったけどよく考えたら10月終わりに彼女に別れ話された時に泣いてるわw
でもその時は泣くのこらえようとしてたから。
昨日はボロボロと涙を流して泣いた。
今の自分の心境を吐露して。
まあ自分の考えを表現するのが下手な僕なので
考えてることの10分の1も言えなかったと思うけど、
自分が何もする意欲がない人間だということなんかを話した。
今更こんなこと言って怒鳴られるかもとか思ってた。
子供の頃は僕もしょっちゅう怒鳴られてたから。
でも父は怒鳴らなかった。
親というのは偉大である。
「この1年くらい、会ったり声を聞いたりする度に『何か悩んでるな』と感じていた」
父は言った。
正直驚いた。
自分としては会った時も電話してる時もいつも変わらず
ダウナー系で接していたと思っていたのに。
「まあ、彼女にフラれたんかな、くらいに思っとったけど」
そう言って父は笑った。
そして父は色々話してくれた。
僕が物心つく前の話、僕が成長するにつれて感じていたこと、
父が何度も転職したいと思ったが家族のために思いとどまったということetc,,,
3時間くらい僕はずっと泣きながら父の話を聞いていた。
鼻水ガ出る度にティッシュで拭いてたらこんなになった。
父はポツリとこう言った。
「ちょっと勉強ばかりさせすぎたんかな…」
それは違う。
僕は子供の頃は勉強机の引き出しに漫画を忍ばせ、
子供部屋で勉強してると思わせて漫画を読んで、
親が階段を登ってくる音がしたらパッと漫画を引き出しに隠して、
あたかもずっと勉強してましたという風にふるまってたようなやつだったのだ。
僕が僕になったのは僕のせいであり父親のせいではない。
父にそんなことを言わせている自分が情けなくてまた涙が出てきた。
父が帰る時間になった。
帰る時間になったと言うより帰ろうとしてたところで
僕が泣き出したから帰るに帰れなくしてしまったのだ。
貴重な休日を僕のくだらない話に付き合わせて申し訳ないと思ったら
やっぱり涙が出てきた。
僕の部屋を出てドアを閉める前に父は言った。
「何かあったら言いーよ」
自分が大人(年齢的には)になり、
身長は最後まで父親に追いつくことはなかったが、
それでも最近は、父親の背が縮んでいるのだろうか、父親が少し小さく見えるようになった。
だけど、人間としての大きさは僕はまだ父の足元にも及ばない。
もしかしたら追いつくことも超えることも出来ないかもしれない。
昔は大嫌いでなりたくない大人だった父は、
今では理想の大人である。
自分も父のようになるために頑張らないといけない。
そう思った。
…まあ自分の妻を怒鳴るような夫にはなりたくないけどね、やっぱり。
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