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週末の繁華街はどうも好きになれない。
U3。●●歳。人海という名の大海を只今大絶賛漂流中。
ああ、ひでんマシン03が欲しい…
僕は大きなため息を一つ吐いた。
この人ごみの中をぶつからないように歩くことほど神経をすり減らすものが他にあるだろうか?
いや、ない。
そう自問自答し、またため息を吐こうと、人いきれの中決して新鮮とは言えない酸素を二つの肺に送り込んだ瞬間、肩に軽い衝撃があった。
刹那息が止まる。
前から来た人とぶつかったらしい。
「あ、すみません…」
咄嗟に声を絞り出した。が、その謝罪の言葉は被害者(僕から見れば向こうが加害者なのだが)には届かなかったらしい。振り返れば被害者(僕は歩行者右側通行を遵守していたのでやはりこの表現には抵抗がある)は若いカップルだった。今様すぎて時代錯誤にも感じるほどのファッションだ。似たり寄ったりの格好をしたカップルが、今日はお買い得ポイント2倍感謝デーといった感じだった。
今日は、日本ではキリストの誕生日に次ぐ恋人たちのお祭りの日でもあり、お菓子会社の陰謀が渦巻く日であり、聖ウァレンティヌスの命日である。
俗に言うバレンタイン・デーだ。
この一日だけで何億円分ものカカオを主原料とした甘いお菓子がやり取りされるらしい。
が、その流れに乗れない者も少なくない。
バレンタインは愛の一日であるだけなく、嫉妬・羨望・諦観といった負の側面も持った一日でもある、というのが個人的考察だ。
そんな無駄なことを考えてるうちにもカップルたちの成すビッグウェーブは幾重にも折り重なってしぶきをあげんばかりになっている。
「さっさと目的を果たして帰ろう」
そうひとりごちて、僕は人通りの少ない裏道へと歩を進め、気付かないうちに上げていたウォークマンの音量を三段階落とした。
「ただいまー、っと」
無人の我が家に向けて形ばかりの挨拶を済ませ、手早く鍵を掛ける。
「うー、さむさむ」
着ていたコートとマフラーを乱暴にベッドに放り投げ、獲物を狩るチーターと見まごうスピードで炬燵へ向かった。
何の気なしにリモコンでテレビをつける。ちょうど夕方のニュースの時間だった。この時期頭頂部が寒そうなアナウンサーがニュースを読み上げている。
「週末と重なったバレンタイン。今年のトレンドは…」
と、声の主が女子アナウンサーに変わり、若い女性が洋菓子店に群がっている様子が画面に映し出された。
「銀座三越地下にあr」
テレビを消した。そんなニュースを見たって一文の得にもならないし、この時間帯、他のチャンネルではめぼしい番組はやっていなかった。
そういえばコートのポケットの中に買ってきたものが入れっぱなしだ。
そのことに気付いた僕は、「行かないで~」と甘く誘惑にしてくるコタツの嬌声にも負けずに抜け出した。そして放射能除去装置を手に入れんとする宇宙戦艦の乗組員のような志で、ベッドという宇宙の彼方へはるばるのぞんだ。
無事帰還。
距離にして七歩、時間にして十五秒という長旅であった。
手に入れた物をコタツテーブルの上に置き、再びコタツの中へと足を滑り込ませる。包み込むような暖かさに下半身が虜になり、えもいわれぬ快楽が僕を襲う。脳が急速に機能を低下し、それに伴い瞼が自然と閉ざされた。
…
……
………
ガサガサ。
何やら物音がする。どうやらドアの向こうからのようだ。
ガサガサ。ガサガサ。
ドアに向かい、覗き穴から様子をうかがう。
一方の手に学生鞄、もう一方の手にレジ袋を携えたロングヘアーの美少女がオロオロしていた。
僕はドアの鍵を外し、続いてドアを開いた。
「あ…」
貧乳(だがそれがいい)美少女は呆けたような表情をした。突然扉が開いたのに少々驚いたようだ。
何か言葉を発しようとして上手くいかないらしい。
だから僕から先に凹凸の少ない美少女に告げた。
「おかえり」
すると少女も破顔して僕に返した。
「ただいま!」
モンゴルの大平原を思わせるような平らかさを持つこの美少女の名前は桂ヒナギク。わけあって僕と同居中なのだが、そのわけについては今は関係ないのでスルーしておく。
「U3くんがドア開けてくれて助かっちゃった♪両手がふさがってて鍵が取り出せなかったのよ」
そういいながらヒナギクは丁寧に靴をそろえて家へと入る。「いっぺん荷物を置けばよかったんじゃ…」という言葉は飲み込んだ。
「コタツ、温まってるよ」
「本当?ありがとう!」
嬉しそうに頬を緩めるヒナギクに僕も続いた。
「そういえば今日は少し遅かったね?」
「うん、なんか学校出るまでに何度も呼びとめられちゃって…」
僕の質問にヒナギクは着ていたコートをハンガーに掛けながら答えた。
「あー!U3くん、またコートを脱ぎっぱなしにしてるじゃない!もう、ちゃんとハンガーに掛けなさいっていつも言ってるのに!」
「あ、そっか。ゴメンゴメン、ちゃんと掛けるよ」
「いいわよ、もうコタツに入っちゃってるんだし、私が掛けておくわ」
「そう?ありがと」
面倒見のいい彼女なので、ため息を吐きつつも僕のコートをハンガーにかけてくれる。
「次からはちゃんと自分で掛けるのよ!いい?」
「はーい」
「返事はハッキリ!」
「ハイ!」
こんな感じで僕らは生活している。
「うーん、やっぱり日本人ならコタツよね♪」
ヒナギクは心底幸せそうに僕の向かい側に座った。
「ところでなんであんなに大荷物だったの?」
落ち着いたところでさっきの質問の続きをした。
「ああ、ほら?今日はバレンタインじゃない?私って何故か毎年こうなのよ…女の子からたくさん渡されちゃうの」
「ああ、友チョコってやつ?」
「変よね?私は女の子らしくしてるのに…」
「ははは…」
さっきのコートのやり取りを見てるとヒナギクの方が僕より男らしく見えるけど…
「私が困ってるの知ってるのに美希までチョコレート渡してくるのよ!?」
「これだけチョコレートを食べると余裕でニキビができそうだね」
「でも捨てられないじゃない…一つ一つ…女の子の想いがこもったものなんだし…」
「そっか…」
まずい…とてもじゃないけど言い出せない。
僕からもヒナギクにチョコレートがあるんだ、って。
そう、普段なら絶対に行かないような週末の繁華街に出かけたのはチョコレートが目的だったのである。「今年は男の子から女の子に贈る逆チョコが流行」なんていうお菓子業界とマスコミの策略に乗っかるのは嫌だったが、好きな人の、ヒナギクの笑顔が見られるんだし、と思って自分を奮い立たせて買いに行ったのだった。
それがまさか彼女を困らせることになろうとは…
僕のチョコレートは気付かれないうちに闇へと葬り去らなければならない。
幸いコタツテーブルの上にある箱にヒナギクはまだ気が付いていないみたいだ。
とりあえずは彼女の目に入らないようにこの箱を移動させなければ!
ミッション…スタート!
「あれ?U3くん、その箱何?」
ミッションインコンプリート…
箱に手を伸ばしたところでヒナギクに気付かれてしまっていた。
「え?これ?コレハベツニナンデモナイヨ?」
片言の日本語をしゃべりながら箱を後ろ手に隠す。
「…何でもないならなんで隠すのよ?」
「だから何でもないんだってばよ!」
今度はどっかの忍者みたいな口調になった。
「見・せ・な・さい!」
「…ハイ」
あっさりとサレンダーした。剣道をやっているだけあってヒナギクの言葉には覇気があった。素直に箱を差し出す。
「これ…」
「えーっと…チョコレート」
観念して真実を告げようとする。
が、
「…ふーん?誰かから貰ったんだ?」
「へ?」
「そうだよね?U3くんだってチョコレート貰う相手の一人や二人いるわよね」
何か勘違いをしてらっしゃる。
「いや…違…」
「よかったわね!チョコレート貰えて!」
「これ、僕からヒナギクへと思って買ったんだけど…」
「やっぱり一つも貰えないってのは寂し…って、え?」
ヒナギクは目を見開いた。
「だから、これは僕からヒナギクへのバレンタインチョコなんだって」
「え?だってバレンタインは女の子から男の子にチョコをあげる日…」
「いや、今年は男から女の子にチョコをあげる逆チョコってのもあるらしくて、それでヒナギクが喜んでくれたらいいなって思って買ってきたんだけど…」
あらいざらい告白した。
「じゃ、じゃあなんで隠そうとしたのよ」
「いや、チョコレートたくさん貰ってヒナギク困ってそうだったから…」
ん?なんかヒナギクがプルプル震えてる?あ、握りこぶし作った。
「ヒナ…」
「バカバカU3くんのバカっ!!」
物凄い勢いで罵倒された。
「U3くんが私のために買ってくれたもので私が困るわけないじゃない!むしろ…どの女の子から貰うよりも嬉しいわよ…」
最後の方は小声にになってよく聞こえなかった。
「そっか…じゃあ」
ヒナギクの手から箱を取り返し、
「改めて、ハッピーバレンタイン、ヒナギク」
再びその手に乗せる。
「あ、ありがとう」
ヒナギクはまだ困惑してるようだった。そして思い出したように、
「そうだ!私もU3くんにチョコレート用意してたんだった!これあげるね!」
と言って半ば投げるように僕に包みを渡した。
その後、興奮したヒナギクをなだめるのに十分を要した。
「やっぱり私もホワイトデーに何かお返ししなくちゃいけないのかしら?
ヒナギクが僕があげたチョコレートを食べながら言った。
「うーん、別に僕はそういうの気にしてないけど。それにホワイトーデーより先にヒナギクの誕生日だよ」
僕もヒナギクから貰ったチョコレートを食べながら言った。
「そっか、これで私がホワイトデーにお返ししなかったら、三月は私が貰ってばかりになるわね。やっぱり私もホワイトデーに何かお返しするわ」
「うん、じゃあ楽しみにしてるよ」
今からホワイトデーが楽しみだ。
「それにしてもすごい量のチョコだなあ」
「うん、でもちゃんと食べなきゃ。…でもこれだけ沢山のチョコレートがあっても」
ヒナギクは少し溜めてから、
「U3くんがくれたチョコレートがきっと一番美味しいよ!」
最高の笑顔で言った。現実:自分で買ってきたアルフォートでも食べるか前回は会話文しかなかったので、今回はラノベ風味にしてみた。
解説ってほどじゃないけど解説記事書きました。
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