最近は暇な授業は読書にあてるようになってます。
語学の予習が終わってる時のみですがね。
今回読んだのは宮本輝の「天の夜曲」。
日本の作家では宮本輝が一番好きです。
多分「我が読んだ輝作品の数>我が読んだ他の日本作家の作品の数」だと思われます。
この「天の夜曲」ですが、タイトルに「流転の海 第四部」とあるとおり、続編ものの四作目です。
この「流転の海」シリーズの主人公は松坂熊吾という男。
その彼が戦後の日本(大阪近辺)で成功し、50歳で子供を授かり、
そして落ちぶれていくさまが描かれています。
…と言ってもこの小説は未だ完結しておりません。
それでもなんとなく結末が見えるのは、この小説が宮本輝の自父伝的小説だからです。
氏は今までにエッセイなどで親のことなどを書いていますが、
まさにこの小説の主人公の熊吾は氏の父親の生き様にかぶるのです。
当然フィクションの部分が多いのでしょうが。
第四部である「天の夜曲」では、
第三部までは持ち前の商売の勘や豪胆さでいくつもの事業を成功させてきた
熊吾の落ちぶれ始めまでが描かれています。
この小説に出てくる人物はみな魅力的です。
主人公の熊吾やその妻の房江、商売仲間などはもちろんのこと、
熊吾のことを不快に思っているような敵にまでドラマがあって小説の世界に引きずり込まれます。
中でも一番魅力を持っていると思うのが、
熊吾が50歳にしてもうけたがゆえに溺愛している息子の信仁。
熊吾の豪胆さと房江の繊細さの両方を受け継いだとても魅力的なキャラクターです。
読みながらついついニヤリとさせられるのは決まって信仁の行動だったりします。
第三部まででもそうでしたが、「天の夜曲」でも、
熊吾は信仁が成人するまでに自分の知識や経験を少しでも信仁に与えようとします。
その熊吾の考えはどれも感銘を受けるものばかりです。
その例を挙げていきたいと思います。
ページ数は新潮文庫版のものです。
138ページ、熊吾の信仁に対するせりふ。
「自分がしてあげたことに対して、何等かの見返りを求めるっちゅうのが、父さんはいちばん嫌いじゃ。こっちがしてあげたことに対して、相手が裏切りみたいなやり方で応じても、知らん振りをしちょれ。それが、いつかお前という人間に幸福のようなものを運んでくる。」
これは何回も人に裏切られてきた熊吾だから言えるせりふですね。
この「天の夜曲」の最後にも熊吾は人に裏切られるのですが…
297ページ、これも熊吾が信仁に向けたせりふ。
「約束っちゅうのは守るためにある。時間に平気で遅れてきたり、しょっちゅうすっぽかす人間ちゅうのは、世の中とか自分以外の人間をなめちょるんじゃ。そういうやつが大成した例しはないけん、つきあわんことじゃ」
これって当たり前のことだけど、当たり前じゃなく思ってる人もいるのが現実。
大学の講義に平気で遅れてくる人って多いですからね。
我はちゃんと最初から出ますよ。遅刻するくらいなら休みます。
途中から入ってくるくらいなら最初からいないほうが講師の方の不快にならないだろうし。
(講師の中にも平気で20分くらい遅れてきて謝罪も何もしない人もいるけどね)
309ページ、熊吾が自分の教えてきたことを信仁に復唱させるシーン。
「約束は守らにゃあいけん」
「丁寧な言葉を正しく喋れにゃあいけん」
「弱いものをいじめちゃあいけん」
「自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」
「女とケンカをしちゃあいけん」
「なにがどうなろうと、たいしたことはあらせん」
まさにその通りと頷けるものばかり。特に5番目(笑)
一番最後の考えはなかなか難しいものがありますがね。
362ページ、これは信仁に対する言葉ではなく熊吾の考え。ここは地の分。
国際法上で「戦争は犯罪である」という条項が書き入れられたとき、初めて世界は全人類的な成熟への第一歩を踏みだすことになるとも考えたりした。
戦争に勝とうが負けようが、戦争を遂行し、何の罪科もない前途ある無告の民を戦場で死なせた者たちは、誰もがみずから責任を取らなければならない。
勝とうが負けようが、何十万人という兵を死なせ、その何倍もの遺族をこの世に出現させた者たちは、戦争の終結とともにみずからを罰しなければならない。それが軍人というものではないのか……。
戦争批判…というよりは戦争を起こすものへの批判ですな。
人を死なせる決断をしておきながらのうのうと生きるべきではないですよね、確かに。
570ページ、久しぶりに会った信仁を見ながら熊吾が思ったこと。
どんな人間にも、これだけは叩き直さなければならないという欠点がある。
このくだりを見たとき、我も自分自身のそういう欠点を探そうとしてみた…が、
欠点を挙げろと言われればいくらでも湧いて出てくるのだが、
「これだけは」となるとなかなか難しい。
もしかしたら我のこれからの人生はその「これだけは」というものを見つけ、
直していくものとなるのかもしれない。
最初は「流転の海」は五部で完結する予定だったらしいですが、
もしかすると七部くらいまでいくかもしれないらしいです。
これはもう大河小説というより大海小説と言ったほうが正しいくらいの作品だと思います。
皆さんも是非この大海に触れてみてください。
読んで面白かった、だけではなくよかったと思える小説、
それがこの「流転の海」シリーズだと我は思います。
現在読んでるのは重松清の「疾走」です。
文庫で上下巻あるので読み終えるのに少し時間かかるかな?
その前に「涼宮ハルヒの憂鬱」を読み終えるのは必至ですな。
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