書く。口にできないから。　　　　　　　　　　　　　　　　

やっちまった…
「天の夜曲」を読了してからまだ二日しか経ってないのに
次の一冊を読んでしまった…
授業の時間の大半を使って…
今日は授業時間が合計３６０分だったところの３／４は読んでた…

というわけで今回読んだのは重松清の「疾走　上」。
日本の作家では宮元輝の次に重松清が好きです。
まだ下巻は読んでませんが、この物語はまさに重松清の作品といった感じです。
思春期の少年を主人公にすえ、兄の逮捕、父親の家出、母親のギャンブル狂い、
そして主人公自身が受けるイジメなどによる家庭の崩壊と主人公の心の崩壊を描いています。
年頃の子供の奥に潜む光と影、それこそが重松作品の真骨頂だと我は思います。
上巻の舞台はおそらく岡山県だと思われる岡山市と倉敷市の間にある町。
兄の逮捕をきっかけに主人公は学校でイジメを受け、
「いつでも死ねる」という考えを持って自殺の日を先延ばしにしていきます。
カッターナイフを手首にあてがうところまではいくものの結局は主人公は自殺はしません。
しかし、上巻の中では常に「自殺」というものが何かの手段のように描かれます。
上巻はひたすら重い雰囲気が漂い、
主人公が中卒で町を出ようとするところで下巻に続きます。
本来なら下巻も読んでから記事にするべきなんでしょうけど、
上巻まで読んだ感想と結末まで読んだときの感想は大きく異なりそうな予感がするんで、
記事にさせてもらいます。
上巻を読んだ感想としては「救いがない」の一言ですかね。
この物語がどのような結末を迎えるのかが非常に気になります。
あとこの小説の特徴としては、地の文が主人公目線の「僕」とか「私」とか「俺」ではなく、
終始「おまえ」という二人称目線で書かれているところがあげられます。
この「おまえ」という響きは主人公が語っているのだが少し離れたところから
物事を見つめているような冷たさを感じ、
作品のかもし出す重い雰囲気を表現する手助けしていると思います。

とりあえず目にとまったところは、
角川文庫版の３２５ページ、自殺前に最後のマスターベーションをしようとする前の主人公の思考。

股間に手をあて、性器を握りながら、居間をぐるぐると回る。性器が熱くなる。固くなる。結局童貞のままで人生が終わるのかと思うと少し寂しかったが、セックスの体験を知らずに死ぬのも百パーセントの「ひとり」にはふさわしいかもしれない、という気もする。

この部分を挙げた我を皆さんはどう思うでしょうか？
重い雰囲気の小説のなかからわざわざこんなところを挙げなくてもいいのに、と思うでしょうか？
しかし、この思考描写こそが重松清なのだと我は思う。
たとえ自殺前であろうとこのように考えるのが思春期の男子なのだと重松清はわかっているのだと思う。
現在も我は「童貞のまま死にたくない」と思ってるし。
もしかしたらこの部分は男性はとてつもなく共感できるし、
女性には全く理解できない部分かもしれない。
でもこの表現を入れることこそが重松清の最大の魅力だと我は思う。


次は当然下巻を読みます…が、土日で授業がないのでいつ読み終わるかはわかりません。




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