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「疾走 下」 重松清 著


上巻の感想はコチラ http://blogs.yahoo.co.jp/u3098310/36405529.html

既に暇な授業中の読書は日課となりつつあります。
去年以上に堕落しているのを感じつつもそれが止められない我です。

というわけで「疾走 下」も読了しました。
この物語の主人公のシュウジは題名通り、ずっと走ってた。
読み終わったときに我はこう感じました。
全てを諦めて受け入れるわけでもなく、
全てに抗い立ち向かうわけでもなく、
シュウジはひたすらに走っていたのだと。
ただ走るのが好きだった少年にどうしてここまでの不幸が訪れるのかと、
読み終わったあといたたまれない気持ちになり、
授業中にもかかわらず涙しそうになりました。
作品全体を通して、シュウジは客観的に見ると不幸でした。
兄が放火魔になり、父親は家族を捨て、母親はギャンブルに狂って家に寄り付かず、
中学校では自身がイジメの対象となり、
ふるさとを捨てて逃げた大阪でやくざを殺さざるを得ない状況に陥り、
さらに逃げた東京でも金を盗まれ、
自分と同じだけど違うと感じていた少女(エリ)の叔父を刺し、
戻ってきたふるさとで死ぬ…
これが不幸でなくて何が不幸であろうかという体験の連続。
でもシュウジは満足だったんじゃないかと我は思う。
うまく言語化できないが、そう思う。
こんなんじゃ感想にならないかもしれないが、
正直我もまだ混乱しているのだ。
きっとシュウジには何か救いがあるのだろうと思って読んでいたのだが、
最後まで救いらしい救いを得ることができなかったから…
まあ死ぬ間際まで「同じ」であるエリといられて
二人の「ひとり」となれたのが救いと言えば救いだろうが…
死ぬ間際にケータイが鳴るのも救いかな…

とりあえず気になった部分をピックアップしてみる。

218ページ、初めての給料を盗まれたあと。

なぜ、ひとは生きなければならない?
なぜ、ひとは生まれてきた?
幸せになるためにひとは生まれ、生きていくというのなら――その「幸せ」の形を見せてくれ。ここを目指せばいいんだ、と教えてくれ。これをつかめばいいんだと教えてくれ。


人は生まれる。
「生まれる」というのは能動のようでもあり受動のようでもある。
人間は誰しも生を受けようとしてこの世に誕生するのではなく、
皆受身で「生まれる」。
自分で何言ってるかわからないけど、そんなことを考えた。
「生まれ」たあと、人は「生きる」…

231ページ、2年ぶりにシュウジを見たエリのせりふ。

「おとなっぽくなった」
「シュウジ、もう子どもみたいにいろんなひとのこと信じてないでしょ」


「いつおとなになったと思う?」という質問に対する最も的確な答えは
「ひとを疑うようになったとき」というのが的確なのかもしれない。
…まあシュウジの場合は人を信じろっていうほうが無茶な人生を歩んでいるわけだけど…

気になった部分というのとは少し違うのだが、
我はとんでもない勘違いをしていたのに気付かされたのが314ページ。
我は地の分の語り部をシュウジ自身が自分自身から切り離したように
他人事のように語っているのだと思って読んでいたのだが、
ここでそれが間違いだったことに気がつく。
また読む機会があればこのことを念頭に入れて読めるだろう。
そしてそのときは今回の感想とは違ったものが生まれるに違いない。


ところで、この「疾走」は映画化されており、
近々DVDも発売されるらしいが
(参照:http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000ETRAT6/249-9770452-3321956?v=glance&n=561958
なんとなく全く見たいと思わない。
多分この小説の全ては映画で表現できないであろうからだ。
作中の変態のやくざにバイブレーターを咥えさせられるシーンなんて映画じゃ表現できないだろうし、
(それが再現されてたら見たいような気もするけど…別に変な意味でじゃないですよ)
そもそも125分で全てを含むなんて不可能だと思う。
そう思うから多分我はこの映画を見ることはないだろう。



現在読んでるのは彼女のオススメである、貴志祐介の「青の炎」。
我の知識が読む手助けになってる部分もあっていい感じです。

読むものがなくなってきたので、今日バイトに行く前に
紀伊国屋に行って調達しようと思います。
とりあえず目当ては宮本輝の「約束の冬」。
と、なくしてしまった「青が散る」(三冊目 笑)
ついでになんか物色してきます。
もうそろそろ家出なきゃ。



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