今回読了したのは宮本輝の「青が散る」。
宮本輝の長編小説の中では一番好きな作品です。
読むのは今回で4,5回目になります。
回数が正確でないのは何度も本をなくしてそのたびに新しいのを買っているため、
読了日書き込み(参照: http://blogs.yahoo.co.jp/u3098310/37230389.html )が確認できないからです。
好きな作品の本ならなくすなよって?返す言葉もないです…
この「青が散る」という作品はテニスを基盤としています。
ではテニスの話だけかというと当然そんなことはなく、さまざまな要素が散りばめられています。
言うならば「青春」としか表現できないかもしれません。
作品中で我が燃えるのはやはりテニスの描写です。
燎平とポンクの試合は読んでて興奮してしまいます。
テニス以外の部分でも、燎平、金子、安斎、貝谷らがそれぞれ恋し、
それに破れていくさまはまさに「青春」、これこそが「青が散る」という意味なのではないでしょうか?
とにかく我はこの作品を多くの人に読んで欲しいです。
特にテニスをやったことのある人は読むべきだと思います。
それでは我の好きな箇所の紹介をば。
90ページ、金子の指摘に口答えした燎平に対する金子の返し
「ほれ、すぐに私憤を表に出すやろ。そういう小心なところが、燎平のテニスにそのまま出てくるんや」
テニスというスポーツは性格が出るスポーツだと言うのは
ココ http://blogs.yahoo.co.jp/u3098310/38021168.html で我も書きました。
特にいつまでも引きずってしまうような人は上手くはなれても強くはなれないと我は思います。
テニスは1ポイントごとにある程度のインターバルができるし、
2ゲームごとに少し休憩もできます。
このときに自分のダメだったプレイを思い返してどつぼにはまってはいけないのです。
いいショットには自身を持ち、悪いショットは忘れてすぐに切り替える。
これがテニスが強くなる第一歩だと思います。
98ページ、貝谷の燎平に対するアドバイス。
「きれいごとのテニスをやってても、試合には勝たれへん」
「一流になるには、変則的なテニスでは限界があるけど、オーソドックスな素直なテニスでは逆に三流の壁がなかなか越えられへん」
テニスに勝つ人はどういう人か?
それはズバリ、卑怯な人である。卑怯なやつが強い。
まあ卑怯と言っても傍から見てて卑怯と言う意味であるが。
空いてるスペースに打ったり、苦手なコースをついたり…
我ですか?我は卑怯になりたくても卑怯になれる実力がなかったので…
オーソドックスなテニスをやっていたので4年間三流選手で終わりましたよ。
191ページ、貝谷のテニス論。
「いかにして確率の高いテニスをするかということや。威力はないけど確実な球を打つ。ファーストサーブをどこに入れるか。ストロークの球筋はどうか。ネットの何センチ上を超えたらええのか。バックラインの何センチ手前に落としたらええのか。相手のいちばんいやがるプレースメントはどこか。どのポイントが大事か。いかにして自分のテニスをするか。……まあ、そんなとこやなァ。そやから、練習のときは、ただそれだけを一心不乱に試しながら打ってるんや」
テニスは頭を使うスポーツでもあります。
頭を使わないと勝てません。
そして勝つための練習から頭を使わなければなりません。
部活では顧問の先生に「練習を試合のように、試合を練習のように」と言われ続けてきました。
自分のテニスをする、というのは実は一番難しかったりします。
337ページ、燎平とポンクの試合を見ていた英文科の教授に関する燎平の回想の中の教授のセリフ。
若者は自由でなくてはいけないが、もうひとつ、潔癖でなくてはいけない。自由と潔癖こそ、青春の特権ではないか。こそこそと授業をずる休みして、うまく単位だけ取ってやろうなんてやつは、社会に出ても大物にはなれん」
自由はわかるが、潔癖とはいったいなんであろうか?
我は潔癖だろうか?潔癖な気もするし、潔癖じゃない気もする。
潔癖とは自由以上に難しい。
単位うんぬんは我も同意。
というより要領よく単位を取れない我の僻み入ってるかも。
425ページ、葬式の後集まった喫茶店での貝谷のセリフ。
「俺、焼香の順番を待ってるとき、なんでテニスの試合には引き分けがないんかなァて考えたんや。ボクシングでも野球でもラグビーやサッカーでも、引き分けがあるのに、テニスには引き分けがない。そう思たとき、人生にも引き分けというもんはないんやろなァという気がしたんや。勝つか負けるか、ふたつにひとつや。なァ、そう思えへんか?」
気にしたことなかったけど、確かにテニスには引き分けがない。
ゲームカウント6-6になったらタイブレークをしてまで決着をつける。
貝谷の言うとおり、人生にも引き分けはないとしたら、
テニスとはあたかも人生の縮図のように感じられるのではないか。
あと、これは何ページというものではないが、
いたるところで使われる言葉。
大きな心で押しの一手
初めは夏子を好きになった燎平に対する金子のアドバイスとして使われ、
その後は燎平が何度も口にしたり、心に思ったりする。
女を落とすための心構えとして金子の口から出たこの言葉だが、
テニスと言うスポーツは突き詰めると「大きな心で押しの一手」となるのではないか?
我は「押しの一手」がなかったため強くはなれなかったが…
こうしてみてみると貝谷のセリフに共感を多くおぼえてるな。
性格やテニスは燎平に近いと思ってたんだけど。
現在は宮本輝の「ドナウの旅人 上」を読んでます。
この作品は我が宮本輝にハマルきっかけになった作品です。
なんか宮本輝ばっかり読んでますが、好きなんだからしょうがない。
「一つのことに拘泥するのは愚かだが、一つのことに拘泥できないのはさらに愚かだ」
というのが我の持論。
というわけなんでこれからもどんどん宮本輝を読んでいくのであります。
blog name:書く。口にできないから。
Author:U3
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